🔬【日本のBSL-4施設について】
・2021年、長崎大学に感染症研究のBSL-4(バイオセーフティレベル4)施設が完成。
・BSL-4とは、致死率が高く、有効な治療法やワクチンのないウイルス(例:エボラ、天然痘)を扱うための最も安全性が高い施設。
・2025年1月に厚労大臣によって正式にBSL-4施設として指定済み。
・施設では現在、BSL-3レベル(SARSやMERSなど)を使った訓練・研究を行い、将来的にBSL-4病原体に対応できるよう準備中。
🦠【エボラ出血熱とは】
・1976年、当時のザイール(現・コンゴ民主共和国)で初めて確認されたウイルス性感染症。
・感染すると数日で高熱・全身倦怠感・多臓器不全・出血症状が出る。
・致死率は約70〜90%と非常に高いが、感染力は比較的低い。
・感染経路は空気感染ではなく、体液(血液、汗、尿、唾液など)による接触感染。
・日常生活レベルの接触では基本的に感染しない。
・回復後の男性の精液中に数ヶ月〜1年以上ウイルスが残存するケースもあり注意が必要。
📈【感染力と拡大の可能性】
・感染力の指標である「基本再生産数(R₀)」はエボラの場合約1前後。
- 例)麻疹:15以上、コロナ(初期):2〜3、デルタ株:5〜8、オミクロン:8〜10以上。
・R₀が低いため、指数関数的な拡大は起こりにくい。
・しかし、2014年の西アフリカでの流行時にはR₀が最大2近くに達したことも。
💉【ワクチン開発の歴史と現状】
・長らくエボラの感染者数が少なく、研究も困難(BSL-4環境が必要)なため、ワクチン開発は進まなかった。
・2014年の流行を受けて、WHOなどが本格的にワクチン開発に着手。
・2015年の臨床試験でワクチン接種群の発症者ゼロと報告され、2019年までにいくつかのワクチンが承認・導入された。
・ただし、有効性は100%ではなく、統計上は69〜100%の範囲とされている点に注意。
⚠️【過度な恐怖と正しい知識の重要性】
・感染症の流行時には、「病気の流行」と「恐怖・不安の流行」の2つが同時に起こる。
・エボラは空気感染しない・感染拡大しにくい・封じ込めが比較的可能な感染症。
・重要なのは「正しく恐れる」ことであり、デマや偏見に振り回されず、正確な情報をもとに行動すること。
💡【日本における対策・提言】
・BSL-4施設の整備は必要だが、安全対策が徹底されており、過度な不安は不要。
・エボラ流行地域からの渡航者に対しては検査や情報提供が必要。
・特に、日本人女性には「回復後の男性の体液感染リスク」について正確な啓蒙が重要。
📌 結論
エボラ出血熱は致死率の高い感染症だが、感染経路や拡大の仕方を正しく理解することで、過剰に恐れず冷静に対処可能。日本でのBSL-4施設の建設に伴い、正しい知識の普及が求められている。