■ 腸内細菌が作る「酪酸」と免疫の関係
腸内細菌が作り出す「酪酸」という物質が、私たちの免疫の最前線において非常に重要な働きをしていることがわかってきました。
がんというのは再発や転移を起こすことで命に関わるケースがありますが、免疫がしっかり働いていれば、体内にがん細胞が潜んでいたとしても、それを抑え込んで再発を防ぐことができるのです。
実際、臓器移植の際に、提供された臓器の中に潜んでいたがん細胞が、移植後に免疫を抑制された側の体内で増殖するというケースも報告されています。
つまり、免疫の強さによってがんが大きくなるかどうかが左右されるということなんですね。
■ 食べ物が免疫を助ける
ここで重要なのが、「食べ物が私たちの免疫を助け、がんの再発や転移のリスクを下げる」という視点です。
腸内細菌が酪酸を作るためには、食物繊維が必要です。酪酸は、食物繊維が腸内で発酵・分解されることで生成される短鎖脂肪酸の一つで、腸のエネルギー源としても重要です。
■ 酪酸の抗がん作用
最近の研究では、この酪酸ががん細胞の休眠を促す働きを持つことがわかってきました。
専門的には、酪酸が「がん抑制遺伝子(例:P53)」を活性化し、逆にがんを促進するような遺伝子の働きを抑えるメカニズムがあると言われています。
また、酪酸には「ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害作用」があり、遺伝子のスイッチのオン・オフを調整することで、がん細胞の増殖を抑えることができるのです。
■ 食物繊維をしっかり摂ろう
重要なのは、食物繊維をきちんと摂ることです。
以下のような食品に多く含まれています:
・野菜、果物、全粒穀物
・豆類、海藻、キノコ
・冷やしたご飯や芋類(※レジスタントスターチ含有)
実際に、1日10g食物繊維の摂取を増やすことで、大腸がんリスクが7%減少するという研究報告もあります。
ただし、食べれば食べるほど良いというわけではありません。
人それぞれ腸内細菌のバランスや処理能力が違うので、少しずつ増やして自分に合った量を見つけていくことが大切です。
■ 発酵食品も腸内環境に重要
さらに、発酵食品も腸内環境を整えるためには欠かせません。
味噌、ぬか漬け、醤油、キムチ、チーズ、納豆などを日常的に摂ることをおすすめします。
これらには有益な乳酸菌やビフィズス菌が含まれており、腸のバリア機能を高め、免疫が過剰に反応しないようサポートしてくれます。
その結果、慢性的な炎症を防ぎ、がんが発生しにくい環境を整えることにつながります。
■ 腸を休める「ファスティング」
腸内環境の改善には、「腸を休ませる時間を作る」ことも効果的です。
たとえば、
・夜9時までに食事を終える
・翌朝9時までは水以外を摂らない(12時間ファスティング)
といった簡易的なファスティングでも効果があります。これにより、腸内環境と免疫機能がリセットされます。
■ がん細胞と免疫の仕組み
がん細胞は「エクソソーム」と呼ばれる微小な粒を放出し、これを免疫細胞がキャッチして異常を察知する仕組みがあります。
ところが、免疫が弱っているとそれに対処できず、がん細胞が増殖してしまうのです。
だからこそ、日常から免疫を高めるために「腸内環境の改善」を意識した食事が重要なんですね。
■ まとめ:今日からできるがん予防アクション
1.食物繊維を意識して摂取する
2.多様な食材から自然な形で摂る(野菜・果物・豆・海藻など)
3.発酵食品を毎日の食事に取り入れる
4.腸を休ませる時間を作る(プチ断食など)
これらを継続的に行うことで、免疫の無駄遣いを防ぎ、がんの発生を抑える環境を整えることができます。