1. エボラ出血熱とは
エボラ出血熱は、エボラウイルスによって引き起こされる重篤な感染症です。
出血症状を伴わないケースも多いため、現在では
「エボラウイルス病(Ebola Virus Disease: EVD)」と
呼ばれることが一般的になっています [1]。
この疾患は1976年にスーダンとコンゴ民主共和国で初めて確認され、
エボラ川近くの村で発生したことからその名が付けられました。
主にアフリカ中央部で発生していましたが、2014年には
西アフリカ地域で大規模な流行が見られました [1]。
2. 感染経路と感染の仕組み
エボラウイルスは、主に患者の体液との直接接触によって感染が広がります。
体液とは、血液、分泌物、唾液、汗、糞便、吐物、母乳、精液などを指し、
これらが非感染者の粘膜(眼、鼻、口)や傷口に触れることで感染が成立します [1]。
また、感染した動物の体液に触れたり、感染した動物を食べたり
することによっても感染する可能性があります [1]。
エボラウイルスは、症状が出るまでは他の人に感染を広げることはありません [1]。
空気感染は通常起こりません。
ウイルスの細胞侵入メカニズム
エボラウイルスが宿主細胞に侵入する際には、
Niemann-Pick C1 (NPC1) タンパク質が重要な役割を果たすことが知られています [5] [6] [7]。
ウイルスはまず細胞のエンドソームに取り込まれ、
そこでNPC1タンパク質と結合することで、ウイルス膜とエンドソーム膜の融合が促進され、
ウイルスの遺伝物質が細胞質内に放出されます。このプロセスを経て、
ウイルスは細胞内で増殖を開始します。
3. 症状
エボラウイルス病の潜伏期間は2〜21日で、平均的には約7日程度です。
発症は突発的で、初期症状として以下のようなものが現れます [1]:
• 40℃を超える高熱
• 頭痛
• 筋肉痛
• のどの痛み
• 倦怠感、食欲不振
これらの初期症状に続いて、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が見られるようになります。
重症化すると、肝機能や腎機能の異常、多臓器不全、
さらには全身の出血傾向(皮膚や粘膜からの出血など)がみられる場合もあります [1]。
感染した場合の致死率は非常に高く、症状は2〜3日で急速に悪化し、
発症から約1週間程度で死に至ることが多い疾患です [1]。
4. 治療
一部のウイルスを除き、エボラウイルス病に対する特別な治療法は
確立されていませんでしたが、近年ではワクチンや治療薬が存在します [3]。
基本的な治療は、症状に応じた対症療法が中心となります。
これには、水分や電解質の補給、痛みや発熱の緩和などが含まれます [3]。
5. 日常生活でできる予防・対策
日本国内で生活する上で、エボラ出血熱に感染するリスクは極めて低いですが、
一般的な感染症対策として以下の点が挙げられます。
• 流行地域への渡航を控える:エボラ出血熱が流行している地域への不要不急の渡航は
避けることが最も重要です [2]。
• 手洗いと手指消毒の徹底:石けんを使った十分な手洗いや、
アルコール手指消毒剤の使用は、一般的な感染症予防に有効です [4]。
• 野生動物や患者との直接接触を避ける:流行地域においては、
野生動物(特にコウモリやサルなど)や、感染が疑われる人、
患者の体液、汚染された物質(注射針など)に直接触れないようにすることが重要です [2]。
• 安全な食品の摂取:流行地域では、野生動物の肉(ブッシュミート)の摂取を避けるなど、
食品の安全に注意を払う必要があります。
これらの対策は、エボラ出血熱だけでなく、他の様々な感染症の予防にも繋がります。
参考文献
1 エボラ出血熱 Ebola hemorrhagic fever | 東京都感染症情報センター
2 エボラ出血熱 - 厚生労働省
3 エボラウイルス病(エボラ出血熱) | 活動ニュース - 国境なき医師団
4 エボラ出血熱の感染予防対策 - 診療と新薬
5 4. エボラウイルスの宿主細胞侵入機構 - 日本ウイルス学会
6 エボラウイルスのグリコタンパク質は,その内分泌受容体 Niemann-Pick C1 に結合する - JoVE
7 NPC1遺伝子はCOVID-19との闘いに役立つか? - Scantox