1. 近年分かってきたこと
ここ20年ほどの研究で、腸内細菌は生活習慣だけでなく、周囲の人の影響も強く受けることが分かってきた。
特に、同居している人の遺伝子が、自分の腸内細菌の構成に影響を与える可能性がある。
この現象は
「間接遺伝効果(Indirect Genetic Effect)」 と呼ばれる。
2. 研究内容(Nature Communications)
アメリカの研究で、ラットを使った実験が行われた。
実験条件
以下を厳密に管理した状態で研究
・餌
・病原体管理
・遺伝子
・飼育環境
その上で、
・自分の遺伝子
・同じケージで暮らすラットの遺伝子
が腸内細菌にどう影響するかを調べた。
3. 腸内環境に影響する3つの遺伝子
研究では、腸内細菌に影響する主な遺伝子が3つ確認された。
① 粘液を多く作る遺伝子
腸の粘液を加工し、
パラプレボテラという細菌のエサになる粘液を作る。
結果
→ パラプレボテラが増える
→ 他の菌のバランスも変化
② 腸のバリアを作る遺伝子(ムチン関連)
腸のバリア機能に関係。
この遺伝子の発現量によって
→ 特定の腸内細菌が増減する。
③ 抗菌物質を作る遺伝子
天然の抗菌物質を作り
→ 特定の細菌の増殖を抑える。
4. 意外な結果
計算すると、
腸内細菌に与える影響
要因 : 影響
自分の遺伝子 : 影響あり
同居個体の遺伝子 : 同じくらい影響
つまり
影響の強さはほぼ1:1
さらに、遺伝の影響を全体で考えると
影響は4〜8倍に拡大する
(周囲の遺伝子も含めた場合)
5. 家族で病気が似る理由
よく
「家族は同じ食事をするから同じ病気になりやすい」
と言われるが、研究は別の可能性を示している。
例
父親が
「特定の腸内細菌を増やしやすい遺伝子」
を持っている場合
↓
その菌が家庭内に広がる
↓
家族全員の腸内細菌に影響
↓
同じ病気リスクが高くなる可能性
※同じ食事でなくても起こる
6. 感染症にも影響する可能性
腸内細菌は
・ウイルス感染
・炎症
・免疫
にも関係する。
例えば
・同居人が病原菌を抑える遺伝子を持つ
→ 家族の感染リスクが下がる
逆に
・病原菌が増えやすい遺伝子
→ 家族全体の感染リスク上昇
インフルエンザで
家族全員かかる
まったくかからない
という現象も、この影響の可能性がある。
7. 健康は「個人だけの問題ではない」
この研究が示す重要な点
健康は完全な自己責任ではない
なぜなら
・腸内細菌
・皮膚の細菌
・生活空間
を通じて
人同士が体内の生態系を共有している
から。
8. 健康対策の新しい考え方
もし腸内環境を改善したいなら
個人だけでは不十分
理想は
家族・同居人と一緒に改善すること
例
・食生活
・発酵食品
・生活習慣
を家族で共有する
→ 効果が高まる可能性
まとめ
この研究のポイント
1.腸内細菌は生活習慣だけでなく同居人の遺伝子にも影響される
2.影響の強さは自分の遺伝子とほぼ同じ
3.家族で病気が似るのは腸内細菌の共有が原因の可能性
4.健康は個人ではなく社会的なもの
つまり
「健康は共有されるもの」
という新しい考え方が示されている。
YouTube Dr Ishiguroより引用