■ マイクロプラスチックとは
・5mm以下の極小プラスチック粒子のこと。
・生活・産業活動で発生したプラスチックが劣化して環境中に広く存在している。
・現代人は日常的に吸い込んだり食べたりして体内に取り込んでいる。
■ 人体での検出例
● 妊婦の胎盤(2020)
・出産後の胎盤6例中4例で、5〜10µmのプラスチック粒子を検出。
・主にポリプロピレン(包装・塗料などに使用)が確認。
・胎児に届く可能性が指摘された。
● 血液(2022)
・22人中17人の血液からPETやポリスチレンなど複数の種類が検出。
・別研究では20人中18人(90%)から検出。
・プラスチックが血管の炎症や血栓形成に関わる可能性が示唆。
● その他の部位
・肺組織、便、母乳などからも検出例あり。
■ 動脈での検出と動脈硬化との関係
● 動脈サンプルを分析(熱分解GC-MS)
・調査した17検体すべてでマイクロプラスチックを検出。
・内訳
・PET:74%
・ナイロン(ポリアミド):16%
・PVC:10%
・ポリエチレン:1%
● 動脈硬化プラークで高濃度に蓄積
・心臓の冠動脈・頸動脈のプラークでは、同じ人の正常部位(大動脈)より2倍蓄積。
● 臨床研究(2024 イタリア)
・頸動脈内膜剥離術の患者の約6割のプラークからポリエチレンを検出。
・プラスチック検出群は、非検出群の4.5倍の割合で
心筋梗塞・脳卒中・死亡 が発生。
・因果関係とは断定できないが、強い関連性が示された。
■ 動物実験:マイクロプラスチックが動脈硬化を悪化
・カリフォルニア大学の研究で、動脈硬化しやすいマウスに9週間暴露。
● 結果(特にオスのマウス)
・心臓近くの大動脈の動脈硬化:63% 増加
・腋窩動脈では 6倍以上のプラーク増加
・一方メスはほぼ変化なし → エストロゲンの保護作用の可能性。
● 仕組み
・マイクロプラスチックが血管内皮細胞を直接傷つける。
・慢性炎症・動脈硬化関連遺伝子の変化を引き起こす。
・プラーク内部に粒子が実際に取り込まれているのが確認された。
■ ではどう対策すべきか?
● 完全に避けることは不可能
・体内に入ったものは排出が難しいが、汗・便・尿で一部排出される。
● 暴露を減らすための生活習慣
1.高温 × プラスチックを避ける
・熱い食品をプラスチック容器で食べたり飲んだりしない。
・電子レンジでプラスチック容器を使わない。
2.素材をガラス・金属へ切り替える
3.加工食品を減らし、新鮮な食材へ
・加工食品には包装由来のプラスチック混入が多い傾向。
4.汗・排泄を促す生活
・運動や入浴で発汗を促すことで一部排出が期待される。
■ まとめ
・マイクロプラスチックは胎盤・血液・動脈など人体の様々な場所から検出されている。
・特に動脈硬化プラークへの蓄積は、心血管疾患リスクの増加と関連する可能性が高い。
・避けることは完全には不可能だが、生活習慣で暴露を大幅に減らすことは可能。
・プラスチックの健康リスクは近年急速に注目されており、今後さらに研究が進むと考えられる。