近年、超加工食品(Ultra-Processed Foods:UPF)が心臓病やがんなどの疾患リスクと関連するという研究報告が増えています。最新の大規模研究では、超加工食品の過剰摂取が脳の構造そのものを変えてしまう可能性が示されました。
■ 超加工食品とは?
工業的に高度に加工され、家庭料理では使わないような
・乳化剤
・着色料
・人工甘味料
・保存料
などが多く含まれる食品を指します。
例:スナック菓子、清涼飲料水、インスタント食品
特徴:高糖質・高脂肪・高塩分、食物繊維やたんぱく質が少ない
一度食べ始めると止まらなくなる「ジャンクフード」に多い食品群です。
■ 超加工食品と脳の変化:3万人の脳MRIを解析
フィンランド・ヘルシンキ大学とカナダ・マギル大学の研究チームは、英国バイオバンクのデータを利用し、3万人以上の中高年の脳MRI画像と食習慣を調べました。
その結果、超加工食品の摂取量が多いほど、以下の脳領域で構造変化が確認されました。
・視床下部:空腹・満腹の調整
・扁桃体:食への情動反応、ストレスによる過食
・側坐核:快楽(ドーパミン)を司る報酬系
これらの領域で白質の体積減少や微細構造の変化が見られ、過食や依存に繋がる生物学的根拠になる可能性が示唆されました。
さらに、肥満や慢性炎症(CRP)などの影響を統計的に除外しても関連が残ったことから、
超加工食品そのものが脳構造に影響している可能性が高いと言えます。
■ なぜ脳が変化するのか?
・高糖質・高脂肪食品は脳の報酬系を強く刺激する
・見るだけで報酬系が興奮するという報告もある
・腸内環境の乱れを介して脳に影響する可能性も指摘
このような脳の変化が「食べても満足できない」「やめられない」という負の循環を生むと考えられています。
■ 超加工食品依存の広がり
世界では成人の約14%がUPF依存の基準を満たすと言われ、
特に女性で割合が高いというデータもあります(米国の50〜60代女性では21%)。
■ 重要なポイント:意思の問題ではない
過食は「意思が弱い」からではなく、
脳がUPFによって変化し、依存状態を引き起こしている可能性があるということです。
■ ではどうすればいい?
・ホールフード(加工度の低い食材)を中心にする
・発酵食品や健康的な加工食品は完全に避ける必要はない
・しかしUPFは、タバコのように規制すべきでは?という議論が海外では進んでいる
・特に子どもの摂取制限が重要
今後は、UPFを減らす介入実験によって脳や行動の変化を観察する研究が求められています。
■ 結論
超加工食品は、体だけでなく脳の構造を変化させ、過食を誘発する可能性がある。
現代ではUPFが溢れているため難しい選択ではありますが、
できる範囲で食生活を見直し、自分の脳と体を守る必要があります。