🔬 1. 「科学的根拠に乏しい検査」が含まれている
▶️ 具体例:
・腫瘍マーカー検査
→ がんの早期発見に有効と思われがちですが、実際は偽陽性や偽陰性が多く、信頼性が低いです。がんでなくても数値が高くなることがあり、むしろ不安をあおるだけになることも。
・脳ドック(MRI/MRA)
→ 無症状の人に行っても、治療が不要な「無害な異常」が多数見つかる。これが「過剰診断」や「過剰治療」につながり、逆に健康被害(精神的ストレス、不要な手術など)を招くことがあります。
💸 2. 費用対効果が見合わないことが多い
・人間ドックは一般的に数万円〜十数万円の自費負担。
・しかし、厚生労働省や各種国際機関(WHO、米国予防医学作業部会など)は、一部の検査以外は健康寿命を延ばす確固たる根拠がないとしています。
・たとえば、健康な40代が毎年CTスキャンや胃カメラを受けることで寿命が延びるとは限らないというのが、現在の医学的な見解です。
⚠️ 3. 過剰診断のリスク
・人間ドックでは「病気かどうかグレーな異常」が見つかりやすい。
・この結果、追加検査や治療が行われてしまい、
・心配が増える
・体に負担がかかる(内視鏡や放射線)
・医療費が無駄にかさむ
といった悪循環に入ることがあります。
例:見つけた甲状腺の小さな結節を「念のため手術」→ 実は一生無害だった → 不要な手術だった可能性も
🧪 4. 定期健康診断で十分なケースも多い
・職場での年1回の健康診断(労働安全衛生法に基づく)で、
・血圧
・血糖
・コレステロール
・肝機能
・尿検査
・心電図
などはすでにカバーされています。
・この内容で、多くの生活習慣病のリスクはチェック可能です。
・追加で行うべきは、本人のリスクに応じた精査に限るのが合理的です。
💡 それでも「人間ドックが意味を持つ」場合
● 家族歴がある
・親・兄弟に早期がん、脳卒中、心筋梗塞があるなら、自分もリスクが高い可能性があるため、精密検査を検討する価値はあります。
● 自分の健康に不安がある
・「漠然とした不安」がある場合、人間ドックを通じて、
・健康への意識が高まる
・生活習慣を見直すきっかけになる
という行動変容の効果が期待できます。
● 健診ではカバーできない検査をしたい
・例:胃カメラ・大腸内視鏡・CTなど
健診に含まれない「がん検診」を希望する人にとっては有意義です。
■ 経緯と体験談
・話者は50歳の誕生日を迎えた医師。
・定期的に受けていた人間ドックでPET検査を実施したところ、虫垂(盲腸部分)に反応があり、悪性腫瘍の疑いが浮上。
・精密検査の増CTではアナフィラキシーショックを起こし、結果的に開腹手術で虫垂切除。
・病理検査の結果、ただの「慢性炎症」で手術は不要だった可能性が高いと判明。
■ 人間ドックに対する見解
・結論としては「人間ドックは受けるべきではないと思っている」。
・理由:
・必要のない検査によって過剰医療・過剰診断・不要な手術に繋がる。
・その結果として、合併症や精神的ストレス、場合によっては寿命が縮まることも。
・実際、話者自身がアナフィラキシーショックや不要な手術のリスクを経験。
■ 推奨される検診(厚労省が推進している5つのがん検診)
・胃がん(胃カメラ)
・大腸がん(便潜血→大腸内視鏡)
・肺がん(必要に応じて)
・乳がん(マンモグラフィ)
・子宮頸がん(細胞診)
・これらは科学的エビデンスがあるとして一定の支持。
■ 不要とされる検査例
・全身PET検査
・頻繁なCT・MRI
・甲状腺などのエコー
・→ 異常が見つかると治療せざるを得なくなり、結果的に「治療不要な病気」に介入してしまうリスク。
■ 人間ドックが普及している背景
・医療ビジネス的な側面が大きい。
・世間やメディアが「人間ドックは受けるべき」という空気を醸成している。
・医師でも誤った知識で推奨する人がいる。
・一般人は「共感脳」による思考停止状態で判断してしまいがち。
■ 自身の立場と妥協
・経営者という立場から、周囲の安心のためには「ある程度の検査は仕方なく受ける」。
・本人の意志としては、人間ドックを積極的には支持していない。
・ただし、全否定はせず、「受けて助かった例があることも事実」。
【まとめ】
・❌ 人間ドックの多くの検査は 科学的根拠が薄く、デメリットが多い。
・✅ 一方で、厚労省が推奨する 特定のがん検診(5つ) はエビデンスがあり有用。
・👉 「人間ドックは万人向けの正義ではない。慎重な見極めが必要」。