■テーマ
光・音・香りなどの五感刺激を活用し、脳の記憶力や健康を改善する研究成果の紹介と、日常での実践方法
◆1. 視覚刺激(光)の効果
・MITの研究によると、1秒間に40回点滅する「40HzのLED光」をアルツハイマー病モデルのマウスに照射すると、脳内のアミロイドβやタウタンパク質が減少し、脳の萎縮が抑えられ、記憶力も向上した。
・同様に40Hzの音刺激にも効果があり、光と音を組み合わせた刺激が最も強力だった。
・人を対象とした臨床試験でも、40Hzの光と音を毎日1時間受けたアルツハイマー初期患者は、記憶中枢の萎縮や脳の空洞(脳室)の拡大が抑制され、ネットワーク機能や睡眠の質が向上。
・最新の研究では、ヘッドセット型デバイスを用いた毎日の刺激で、日常動作の低下が77%、認知機能の低下が76%、脳の萎縮が69%抑制されたという報告もある。
◆2. 聴覚刺激(音)の効果
・音楽療法は以前から認知症のケアに活用されており、特に深い睡眠時に流す「ピンクノイズ」が、記憶定着を促進し、翌日の記憶テストの成績を向上させる効果が確認されている。
・日常生活では、懐かしい音楽や新しいジャンルの音楽、自然音(波や雨の音など)を取り入れることで脳を刺激できる。
◆3. 嗅覚刺激(香り)の効果
・嗅覚は脳と直結しており、記憶や認知機能と密接な関係がある。
・嗅覚の低下はアルツハイマー病の初期兆候とも言われている。
・2023年の研究では、60〜85歳の健康な高齢者43人を対象に、就寝時にエッセンシャルオイル(バラ、ラベンダー、ローズマリーなど)を2時間香らせる生活を6か月間継続した結果、記憶力テストの成績が226%向上した。
・MRIでも脳の記憶に関わる回路の活動が強化されていた。
◆4. 日常での五感刺激の実践法
●視覚
・朝は太陽光を浴びる(体内時計をリセット)。
・日中は自然の風景や美術館での鑑賞。
・夜は照明を落とし、睡眠の質を高める準備。
●聴覚
・懐かしい音楽や新しい音楽(若者の音楽も含む)を取り入れる。
・就寝前は波や雨などの自然音で深い眠りを促す。
●嗅覚
・朝はコーヒーの香りで脳を活性化。
・夜はラベンダーなどリラックス効果のある香りを枕元に。
・日中は花やハーブの香りで嗅覚を刺激。
■まとめ
・五感(光・音・香り)を通じた脳刺激は、記憶力や認知機能の改善に効果がある可能性が科学的に示されつつある。
・特別な機器がなくても、日常生活の中で意識的に取り入れることが可能。
・小さな習慣を積み重ねることで、脳の老化予防や認知症対策につながると期待されている。